11/09/2026
【ほうれん草の胡麻和えと、香りが呼び戻す記憶】
「胡麻」と聞くのと、
胡麻の香りをかぐのとでは、
思い出すことが違うのでしょうか。🌿
ほうれん草の胡麻和え。
写真の小さな胡麻を見ていると、見た目は控えめなのに、香りではずいぶん存在感のある食材だと思います。少量でも、ほうれん草に主役を譲りきらない(笑)。
今回は、その香りから「うつ病と記憶」の話です。
2024年、米国の研究者が、うつ病の成人32人を対象に、匂いと言葉を手がかりにして、自分の過去の出来事を思い出してもらいました。🧠
使ったのは、コーヒーやバニラなどの匂いと、それに対応する言葉です。
具体的な出来事を思い出せた割合は、匂いを手がかりにした条件で平均68.4%、言葉の条件では52.1%でした。
ここでいう「具体的」とは、「昔よく外食した」という大まかな記憶ではなく、ある場所で起きた、ある一日の出来事を指します。
うつ病では、こうした個々の出来事を思い出しにくくなることがあります。今回の研究では、何を手がかりに尋ねるかによって、思い出せる記憶の具体性に違いが認められました。
ただし、これは少人数の横断研究で、同じ参加者の反応を比較したものです。うつ症状を改善する治療試験ではありません。胡麻の香りも調べていません。
「胡麻和えでうつがよくなる」とは言えません。
精神科医として、奥平はこの研究を、患者さんへの尋ね方を考える材料とします。
うまく言葉が出てこないとき、同じ質問を繰り返すだけでは、聞き取れないこともあるのかもしれません。好きだった料理や、なじみのある香りを話題にすることも、会話の手がかりとして考えたい。ただし、思い出すのが心地よい出来事とは限らないので、無理に促すことは避けます。
「食と心」の専門医師として、食事の内容とともに、その人が何をおいしいと感じ、どんな食卓を覚えているのかにも関心があります。
目の前の一皿について話していたら、昔の台所や、誰かと食べた日の話になる。そんな会話も大切にしたいと思います。🍽️
香りだけで懐かしくなる料理を、一つ教えてください。
参考文献
Leiker EK. JAMA Netw Open. 2024. PMID: 38349650
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