下松市 諏訪歯科医院

下松市 諏訪歯科医院 私たちは「患者さんにとって、何が一番幸せか?」と考えます。

12/09/2026

ニコチンの入っていないたばこがありますが、果たして普通のたばこと歯周組織に対する影響に差はあるのでしょうか。

ニコチン自体にも歯周組織に対する有害作用はありますが、通常の紙巻きタバコの喫煙による歯周破壊は、ニコチン単独よりもタバコ煙全体(燃焼由来の数千種の化学物質・タール・活性酸素など)の複合的な毒性作用によるところが大きいとされています。つまり「ニコチンあり/なし」で単純に二分できる問題ではなく、燃焼を伴うか、ニコチン以外の成分がどれだけ含まれるかによって歯周組織への影響は大きく変わります。

【ニコチン単独の作用】
動物実験・in vitro研究では、ニコチン単独投与でも歯槽骨吸収の増強、破骨細胞数の増加、RANKL発現亢進、歯周靱帯線維芽細胞や歯肉線維芽細胞の増殖抑制・炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8)産生亢進、血管収縮による創傷治癒遅延などが確認されています。歯周靱帯細胞への直接的な細胞毒性も報告されています。[1-3]

【タバコ煙全体(燃焼由来成分)の作用がより強い】
一方で、in vitroエビデンスのレビューでは、生理的濃度のニコチン単独では口腔組織に対する細胞毒性は乏しいと結論づけられており、歯周組織破壊の主因はニコチンよりもタバコ煙全体(燃焼で生じる9,500種以上の化学物質、うち80種以上が発がん性物質)であるとされています。実際、紙巻きタバコの煙は電子タバコ蒸気や加熱式タバコのエアロゾルと比較して、歯周靱帯細胞においてより強い壊死性細胞死を誘導することがフローサイトメトリー解析で示されています。[4-5]

【臨床的な比較】
従来の紙巻きタバコ(燃焼あり、ニコチンあり):プロービングデプスの増加、アタッチメントロス、歯槽骨吸収、治療への反応性低下が一貫して認められる、歯周炎リスクは非喫煙者の5~6倍。[4][6-7]

電子タバコ(燃焼なし、ニコチンあり/なし選択可):非喫煙者と比較してプロービングデプスに有意差を認めないとするネットワークメタ解析があり、紙巻きタバコよりも歯周組織への影響は軽度と考えられている。ただし口腔マイクロバイオームへの独自の悪影響の可能性はあり、エビデンスはまだ限定的。[4][8]

加熱式タバコ(燃焼なし、ニコチンあり):発がん性物質は最大90%減少するがニコチン量は不変。歯周組織への影響を検討する試験は進行中で結論は未確定。[4-5]

無煙タバコ・ニコチンパウチ(燃焼なし、ニコチンあり、口腔内使用):局所的な歯肉退縮、付着位置の炎症は認めるが、必ずしも歯周炎の発症増加とは関連しない(スウェーデン式スヌースのデータ)。 [9]

臨床的には、燃焼を伴う紙巻きタバコが最も歯周組織への悪影響が大きく、ニコチンの有無だけでなく燃焼由来の有害物質の存在が歯周破壊の主要な規定因子と考えられます。禁煙により歯周炎リスクは非喫煙者に近づき、非外科的治療の効果も改善することが示されています。[10]
1.
The Effects of Cigarette Smoke Condensate and Ni****ne on Periodontal Tissue in a Periodontitis Model Mouse.
PloS One. 2016. Kubota M, Yanagita M, Mori K, et al.
2.
Micro‐computerized tomography analysis of alveolar bone loss in ligature‐ and ni****ne‐induced experimental periodontitis in rats.
Journal of Periodontal Research. 2010. Liu YF, Wu LA, Wang J, Wen LY, Wang XJ.
3.
Platelet-rich plasma promotes cellular recovery from ni****ne-induced toxicity via autophagy modulation.
Scientific Reports. 2026. Vérièpe-Salerno J, Cancela JA, Vischer S, et al.Recent
4.
Oral and periodontal implications of to***co and ni****ne products.
Periodontology 2000. 2021. Chaffee BW, Couch ET, Vora MV, Holliday RS.Review
5.
Cytotoxic impact of ni****ne products on periodontal ligament cells.
Clinical Oral Investigations. 2024. Wiesmann-Imilowski N, Becker P, Gielisch MW, et al.
6.
The impact of smoking different to***co types on the subgingival microbiome and periodontal health: a pilot study.
Scientific Reports. 2021. Al Kawas S, Al-Marzooq F, Rahman B, et al.
7.
Do smokers have a different gingival crevicular fluid cytokine/chemokine profile than nonsmokers in clinically healthy periodontal sites? A systematic review and meta-analysis.
Clinical Oral Investigations. 2022. Dutra TP, Sacramento CM, Nagay BE, et al.SR
8.
Evaluation of periodontal indices among non-smokers, to***co, and e-cigarette smokers: a systematic review and network meta-analysis.
Clinical Oral Investigations. 2022. Pesce P, Menini M, Ugo G, et al.SR
9.
Interventions to prevent periodontal disease in to***co‐, alcohol‐, and drug‐dependent individuals.
Periodontology 2000. 2020. Kumar PS.Review
10.
Impact of Smoking Cessation on Periodontitis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prospective Longitudinal Observational and Interventional Studies.
Ni****ne & To***co Research : Official Journal of the Society for Research on Ni****ne and To***co. 2019. Leite FRM, Nascimento GG, Baake S, et al.SR

口の中を含む、顎顔面領域に発現する難治性の痛みとして三叉神経痛があります。カルバマゼピン(テグレトール)は三叉神経痛の第一選択薬であり、少量から漸増して有効最低量を維持する投与法が推奨されます。[1-4]【開始・漸増法】最初は200mgから...
02/09/2026

口の中を含む、顎顔面領域に発現する難治性の痛みとして三叉神経痛があります。

カルバマゼピン(テグレトール)は三叉神経痛の第一選択薬であり、少量から漸増して有効最低量を維持する投与法が推奨されます。[1-4]

【開始・漸増法】
最初は200mgから開始し、12時間ごとに最大200mg/日ずつ増量します(FDA添付文書に基づく用法)。 あるいは1日200mgを2回投与から開始し、数週間かけて1日200mgずつ漸増する方法も報告されています。[3][5]

欧州神経学会(EAN)ガイドラインでは、開始量200~400mg/日から、3日ごとに200mgずつ増量することが提案されています。[1][4]

痛みがなくなるまで漸増するのが原則で血中濃度モニタリングは効果判定に有用ではありません。[1]

【維持量】

多くは400~800mg/日(1日2~4回に分割)で痛みのコントロールが得られますが、200mg~1200mg/日を相当例もあります。[5]

EANガイドラインでの使用量範囲は200~1800mg/日とやや広いです。[1]

1日最大量は1200mg/日を超えないことが添付文書上の目安です。[5]

【減量・中止のタイミング】

3か月ごとに、最小有効量への減量や中止を試みることが推奨されます。[1][5]

【開始前の必須検査と注意点】

治療開始前に血液検査と心電図(特に房室ブロック等の確認)が望ましい。[1]

よくある副作用には眠気、めまい、運動失調、悪心、白血球減少があり、まれにスティーブンス・ジョンソン症候群、肝臓障害、低血圧症、体重の急激な奇形性、骨密度低下(長期使用時)が報告されています。[1][3]

ワルファリンや経口避妊薬など他剤の血中濃度を低下させる相互作用があるため注意が必要です。[1]

有効性は約90%と高い方、副作用により23%が治療中止に至るとの報告があり、有効・不耐性の場合はオクスカルバゼピン(カルバマゼピン200mg=オクスカルバゼピン300mgの等価比較)への切り替えが可能です。[1-2]

三叉神経痛の診断・治療全体のアルゴリズムとして、Nature Reviews Disease Primersの三叉神経痛の総説にある治療シナリオが薬物療法から外科的介入までの流れを示しています。

1.
Advances in Diagnosis, Classification, Pathophysiology, and Management of Trigeminal Neuralgia.
The Lancet. Neurology. 2020. Bendtsen L, Zakrzewska JM, Heinskou TB, et al.Review
2.
Trigeminal Neuralgia.
The New England Journal of Medicine. 2020. Cruccu G, Di Stefano G, Truini A.Review
3.
Trigeminal Neuralgia: Rapid Evidence Review.
American Family Physician. 2025. Amaechi O.Guideline
4.
European Academy of Neurology Guideline on Trigeminal Neuralgia.
European Journal of Neurology. 2019. Bendtsen L, Zakrzewska JM, Abbott J, et al.Guideline
5.
Carbatrol. FDA Drug Label.
Food and Drug Administration. Updated date: 2026-08-17.
6.
Trigeminal neuralgia.
Nature Reviews. Disease Primers. 2024. Ashina S, Robertson CE, Srikiatkhachorn A, et al.Review

19/08/2026

「矯正治療の際に親知らずをどう扱うか」に関するお話です。

現在の科学的根拠に照らすと、親知らず(第三大臼歯)の存在が矯正治療の後戻り(下顎前歯部の叢生再発)に一貫して有意な影響を及ぼすという因果関係は証明されていません。 複数の系統的レビューおよび臨床研究の結果は一致しておらず、予防的抜歯を日常的に推奨する根拠にはなっていません。

【根拠】
2026年のシステマティックレビュー(Amberg et al.)では、保定装置を使用しない矯正後患者において、親知らずを抜去した群と保持した群のいずれも前歯部叢生は経時的に増加したが、両群間に統計学的有意差はなかった。エビデンスの確実性は「非常に低い」とされ、叢生予防目的の予防的抜歯は支持されないと結論づけられている。 [1]

Zawawi & Melisの系統的レビュー(12研究)でも、大半の研究で親知らずと前歯部叢生の重症度との相関は認められず、因果関係は支持されなかった。[2]

Cotrinらの後ろ向き研究(108例)では、保定後評価時に下顎第三大臼歯が存在する群と存在しない群との間で、下顎前歯部叢生の後戻り(Little's Irregularity Index)に統計学的有意差は認められなかった。[3]

一方、Palikarakiらのメタアナリシス(13研究、うち7研究を定量解析)では、親知らずが存在しない群の方が叢生・Little's Irregularity Index・歯列弓長のいずれにおいても有意に良好な結果を示したと報告しており、上記の結果と矛盾している。この不一致は、研究間の異質性(治療プロトコル、保定方法、測定方法のばらつき)とバイアスリスクの高さに起因すると考えられる。[4]

Contemporary Approaches to Orthodontic Retentionのレビューでも「第三大臼歯は矯正後の後戻りにほとんど影響しない」と明記されている。 [5]

【臨床的意味】
叢生再発の予防のみを目的とした親知らずの予防的抜歯は、現時点のエビデンスでは正当化されない。[1-2]

実際の臨床決定は、叢生の懸念よりもむしろ埋伏の状態(骨性埋伏、萌出方向、歯根形成度など)や将来的な病的リスク(智歯周囲炎、隣接歯う蝕・歯根吸収など)に基づいて行われることが多い。[6-7]

矯正治療歴のある患者では、下顎第三大臼歯が部分萌出にとどまる可能性が有意に高いとの報告があり、これが智歯周囲炎や隣接第二大臼歯の齲蝕リスクにつながりうるため、個別に経過観察や抜歯適応を検討する価値がある。[8]

米国とスウェーデンの矯正歯科医を対象とした調査でも、多くの臨床医は下顎智歯が前方力を及ぼしうると考える一方、実際に叢生を引き起こすことは「稀」または「ない」と考えており、予防的抜歯の推奨率には国・専門分野間でばらつきがある。[9-10]

総括すると、親知らずが矯正治療の後戻りに与える影響は科学的に確立されておらず、エビデンスは低質かつ相反する。したがって、叢生再発予防のみを理由とした一律の予防的抜歯は推奨されず、個々の埋伏状態や病的リスクに基づいた症例ごとの判断が妥当である。[1-2][11]

1.
Wisdom Teeth Removal and Anterior Alignment Stability After Orthodontic Treatment-a Systematic Review.
Clinical Oral Investigations. 2026. Amberg S, Kroeger A, Houlston E, Şen S, Kebschull M.RecentSR
2.
The Role of Mandibular Third Molars on Lower Anterior Teeth Crowding and Relapse After Orthodontic Treatment: A Systematic Review.
TheScientificWorldJournal. 2014. Zawawi KH, Melis M.SR
3.
Evaluation of the Influence of Mandibular Third Molars on Mandibular Anterior Crowding Relapse.
Acta Odontologica Scandinavica. 2020. Cotrin P, Freitas KMS, Freitas MR, et al.
4.
Effect of Mandibular Third Molars on Crowding of Mandibular Teeth in Patients With or Without Previous Orthodontic Treatment: A Systematic Review and Meta-Analysis.
The Angle Orthodontist. 2024. Palikaraki G, Mitsea A, Sifakakis I.SR
5.
Contemporary Approaches to Orthodontic Retention.
Journal of Esthetic and Restorative Dentistry : Official Publication of the American Academy of Esthetic Dentistry .... 2012. Heymann GC, Grauer D, Swift EJ.
6.
Factors Influencing Prophylactic Extraction of Mandibular Third Molars in Orthodontic Practice: A Cross-Sectional Study.
American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics : Official Publication of the American Association of Orthodontists, Its Constituent Societies, and the American Board of Orthodontics. 2025. Ziv-On H, Laviv A, Davidovitch M, et al.
7.
Surgical Removal Versus Retention for the Management of Asymptomatic Disease-Free Impacted Wisdom Teeth.
The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020. Ghaeminia H, Nienhuijs ME, Toedtling V, et al.SR
8.
The Association Between Orthodontic Treatment and Third Molar Position, Inferior Alveolar Nerve Involvement, and Prediction of Wisdom Tooth Eruption.
Surgical and Radiologic Anatomy : SRA. 2015. Miclotte A, Franco A, Guerrero ME, Willems G, Jacobs R.
9.
Opinions of American and Swedish Orthodontists About the Role of Erupting Third Molars as a Cause of Dental Crowding.
The Angle Orthodontist. 2009. Tüfekçi E, Svensk D, Kallunki J, et al.
10.
Oral Maxillofacial Surgeons and Orthodontists' Perceptions About Anterior Inferior Crowding and Indications of Mandibular Third Molar Extraction.
Medicina Oral, Patologia Oral Y Cirugia Bucal. 2024. Recchioni C, Junior ES, Ramacciato JC, Oliveira LB.
11.
Third Molar Management: A Case Against Routine Removal in Adolescent and Young Adult Orthodontic Patients.
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery : Official Journal of the American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons. 1999. Hicks EP.Opinion

02/08/2026

我々は、医療従事者として手の清潔性に留意していますが、爪の長さにも配慮しています。爪の下(爪下腔)は手の中で最も細菌密度が高い部位であり、爪が長いほど細菌数、特に黄色ブドウ球菌の保菌率が増加することが複数の研究で示されています。[1-2]

【爪下腔の細菌密度】
爪下腔の細菌数は他の手の部位と比べて桁違いに多く、平均log10 CFUが5.39であるのに対し、他の手の部位では2.55〜3.53にとどまります。優位菌種はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌など)で、グラム陰性桿菌(特にPseudomonas属)が42.3%、酵母様真菌(主にCandida parapsilosis)が69%の対象者から検出されています。 [3]

【爪の長さと細菌数の関係】
465名の医療従事者を対象とした多変量回帰分析では、爪の長さが2mmを超えると黄色ブドウ球菌の保菌率が有意に上昇しました(オッズ比2.17、95%CI 1.29–3.66)。ただし、この解析ではグラム陰性桿菌の保菌や総細菌数との関連は認められませんでした。[1]一方、他の報告では以下のように結果が一部異なります。
Ruppら(2008年、看護師69名・192検体)は、爪長2mm超で総細菌数の増加を認めたが、腸内グラム陰性菌の検出には差がなかった。[1]
Wynd ら(1994年、看護師100名)は、爪の長さと総細菌数との関連を検出できなかった。[1]
外科手術スタッフを対象とした研究でも、爪の長さ2mm超が唯一、細菌数増加と関連する因子であった(マニキュアの有無は無関係)。[2]
食品取扱者を対象とした研究では、爪が長いほど爪下の大腸菌数が多く、人工爪は天然爪より菌数が有意に多いことが示されている。[4]
このように、総細菌数への影響については研究間で一致していない部分がありますが、黄色ブドウ球菌の保菌率増加や爪下腔の高い菌数密度という点はおおむね一貫して示されています。

【推奨される爪の長さ】
ガイドラインにより数値は異なります。
CDC:1/4インチ(約6.3mm)未満[1]
WHO:5mm未満[1]
Fagernesらの研究に基づく推奨:2mm以下[1]

臨床的には、特に医療従事者や食品取扱者では爪を短く保つこと(2mm以下が目安)が、黄色ブドウ球菌をはじめとする細菌の保菌・伝播リスク低減に資すると考えられます。長い爪の下からは黄色ブドウ球菌、サルモネラ属、赤痢菌、大腸菌などの病原菌も分離されており、手指衛生の徹底が重要です。[5]
以上より、諏訪歯科医院では歯科医師をはじめ歯科衛生士、歯科助手は爪を可及的に短く(2mm以下)するようにしております。

1.
Factors interfering with the microflora on hands: a regression analysis of samples from 465 healthcare workers.
Journal of Advanced Nursing. 2011. Fagernes M, Lingaas E.
2.
The Effect of Nail Characteristics on Surface Bacterial Counts of Surgical Personnel Before and After Scrubbing.
Veterinary Surgery : Vs. 2017. Hardy JM, Owen TJ, Martinez SA, Jones LP, Davis MA.RCT
3.
Composition and Density of Microflora in the Subungual Space of the Hand.
Journal of Clinical Microbiology. 1988. McGinley KJ, Larson EL, Leyden JJ.
4.
A Comparison of Hand Washing Techniques to Remove Escherichia Coli and Caliciviruses Under Natural or Artificial Fingernails.
Journal of Food Protection. 2003. Lin CM, Wu FM, Kim HK, et al.
5.
Antibacterial Activity of Chloroxylenol and Thymol Against Pathogenic Bacteria Isolated From Under Long Nails.
European Review for Medical and Pharmacological Sciences. 2023. Albureikan MOI, Alotaibi LMA.

22/07/2026

歯磨きが不十分だと歯科医師や衛生士さんから磨き残しを指摘されて歯ブラシの当て方を変えたり歯磨き時間や回数を増やす事等の改善を促されることがあります。

こういった場合の習慣の修正に要する期間について、医学文献には明確な数値データがありません。

歯磨き行動が習慣的に行われているかどうか、また習慣形成のメカニズムについては研究されていますが、新たに習慣化するのに何日かかるかという具体的な期間は示されていません。[1-2]

一般的な健康行動の習慣化に関する知見としては、以下のことが分かっています:

【習慣形成に要する期間】

新しい日常的な健康行動が自動的になるまでには、18日から254日と個人差が大きく、平均して約66日かかるとされています[3]

行動の複雑さによって習慣化の期間は異なり、より複雑な行動ほど時間がかかります[4-5]

運動習慣の場合、週4回以上の頻度で6週間継続すると習慣が形成されるという研究があります[6]

栄養行動では59日で自動性のピークに達したという報告もあります[7]

【習慣形成の鍵となる要素】

重要なのは時間そのものではなく、一貫した反復です[3]

同じ時間帯や他の行動との組み合わせを繰り返すことが習慣形成を促進します[7-8]

歯磨きの場合、朝の歯磨きは夜よりも習慣化されやすく、これは朝のルーティンがより安定しているためと考えられています[1]

歯磨きは比較的シンプルな行動ですが、1日2回という頻度と、既存の生活習慣への組み込みを考えると、数週間から数ヶ月の継続的な実践が必要と推測されます。

1.
Is toothbrushing behaviour habitual? Cues, context, motivators and patient narratives.
Community Dentistry and Oral Epidemiology. 2021. Raison H, Corcoran R, Harris RV.
2.
Habit and Goal-Related Constructs in Determining Toothbrushing Behavior: Two Sensor-Based Longitudinal Studies.
Health Psychology : Official Journal of the Division of Health Psychology, American Psychological Association. 2022. Zhang C, Spelt H, van Wissen A, Lakens D, IJsselsteijn WA.
3.
Digital therapeutics in hypertension: How to make sustainable lifestyle changes.
Journal of Clinical Hypertension. 2024. Chen C, Liu A, Zhang Z, Chen J, Huang H.Review
4.
Some habits are more work than others: Deliberate self‐regulation strategy use increases with behavioral complexity, even for established habits.
Journal of Personality. 2025. Saunders B, More KR.
5.
What Can Machine Learning Teach Us About Habit Formation? Evidence From Exercise and Hygiene.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2023. Buyalskaya A, Ho H, Milkman KL, et al.
6.
Exercise Habit Formation in New Gym Members: A Longitudinal Study.
Journal of Behavioral Medicine. 2015. Kaushal N, Rhodes RE.
7.
Habit Formation Following Routine-Based Versus Time-Based Cue Planning: A Randomized Controlled Trial.
British Journal of Health Psychology. 2021. Keller J, Kwasnicka D, Klaiber P, et al.RCT
8.
Testing the effect of text messaging cues to promote physical activity habits: a worksite‐based exploratory intervention.
Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2017. Fournier M, d'Arripe-Longueville F, Radel R.RCT

15/07/2026

酷い痛みを堪えて来院され、他院で何度麻酔をしても、全く効かなかった患者さんがおられました。

炎症を起こしている場所に部分麻酔が効きにくいのは、「麻酔の薬が神経のバリアを通り抜けられなくなるから」です。

炎症の際、麻酔が効きにくい理由が3つあります。

1. 痛い場所が酸性になっているから

* 麻酔の薬は、神経の壁(バリア)を通り抜けて、中に入ることで痛みを止めます。
* しかし炎症を起こして赤く腫れると、その場所が「酸性」に変わります。
* 麻酔薬は酸性の場所に入ると、形が変わってしまい、神経の壁を通り抜けられなくなってしまいます。
* 壁の外側で薬がせき止められるため、麻酔が効きません。

2. 薬が血と一緒に流されてしまうから

* 炎症が起きている場所は、細菌と戦うために血液がたくさん集まっています。
* せっかく麻酔の注射を打っても、激しい血の流れに乗って、薬がすぐに別の場所へ流されてしまいます。
* 痛みを止めたい場所に、薬がじっと残っていられないのです。

3. 水分で薬が薄まってしまうから

* 腫れている場所には、水(組織液)がたくさん溜まっています。
* カルピスに水をたくさん入れると薄くなるのと同じです。
* 麻酔の薬が水で薄まってしまうため、パワーが弱くなります。

このように、「薬の形が変わって中に入れない」「すぐ流される」「薄まる」という理由で麻酔が効きにくくなります。

12/07/2026

子宮頸がん予防で知られるHPVワクチンは口腔がん(特に中咽頭がん)の予防に高い効果を示しています。ワクチンは口腔内のHPV感染を46-93%減少させ、特にHPV16/18型の口腔感染を80-88%減少させることが複数の研究で示されています。 [1-3]

口腔HPV感染に対する効果
メタアナリシスでは、HPVワクチン接種者は非接種者と比較して、ワクチン型の口腔HPV感染が46%低いリスクを示し(リスク比0.54)、特にHPV16型の口腔感染は80%低いリスク(リスク比0.20)でした。米国の研究では、ワクチン接種者における口腔HPV16/18/6/11感染の有病率が[1]88.2%減少したことが報告されています。 [2]

頭頸部がんに対する効果
口腔がん自体の発生に関する直接的なエビデンスは限られていますが、以下の知見があります:

コホート研究では、ワクチン接種により女性で89%(リスク比0.11)、男性で96%(リスク比0.04)の頭頸部がんリスク減少が報告されています[4]

2020年にFDAは9価HPVワクチン(Gardasil 9)の適応を中咽頭がんおよびその他の頭頸部がん予防に拡大しました [5-6]

持続的な口腔HPV感染は中咽頭がんの前駆状態として認められており、ワクチンによる感染予防が将来的ながん予防につながると考えられています[5]

集団レベルでの影響
米国の予測モデルでは、現在のワクチン接種率において、2018年から2045年の間に6,334例の中咽頭がんが予防されると推定されています。特に36-45歳の年齢層では、男性で48.1%、女性で42.5%の発生率減少が予測されています。[7]

Feedback
ただし、ワクチン接種を受けていない高齢者層では引き続き高リスクが残るため、2045年までの全体的な中咽頭がん発生率への影響は限定的です。最大の予防効果を得るには、特に男性を含めた性別中立的な高いワクチン接種率の達成が重要です。 [5][7-8]

1.
Human Papillomavirus Vaccine to End Oropharyngeal Cancer. A Systematic Review and Meta-Analysis.
Sexually Transmitted Diseases. 2021. Tsentemeidou A, Fyrmpas G, Stavrakas M, et al.SR
2.
Effect of Prophylactic Human Papillomavirus (HPV) Vaccination on Oral HPV Infections Among Young Adults in the United States.
Journal of Clinical Oncology : Official Journal of the American Society of Clinical Oncology. 2018. Chaturvedi AK, Graubard BI, Broutian T, et al.
3.
Human Papilloma Virus Vaccine and Prevention of Head and Neck Cancer, What Is the Current Evidence?.
Oral Oncology. 2021. Diana G, Corica C.Review
4.
Effects of Human Papillomavirus (HPV) Vaccination Programmes on Community Rates of HPV-related Disease and Harms From Vaccination.
The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2025. Henschke N, Bergman H, Buckley BS, et al.RecentSR
5.
Closing the Gap: HPV Vaccination and Head and Neck Cancer Prevention.
Current Oncology Reports. 2026. Tosoni A, Bibbò A, Di Nunno V, et al.RecentReview
6.
Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents With HIV.
Infectious Diseases Society of America; Office of AIDS Research Advisory Council (2025). 2025. Constance Benson, John Brooks, Shireesha Dhanireddy, et alGuideline

7.
Projected Association of Human Papillomavirus Vaccination With Oropharynx Cancer Incidence in the US, 2020-2045.
JAMA Oncology. 2021. Zhang Y, Fakhry C, D'Souza G.Modeling

8.
The Effectiveness of Gender-Neutral HPV Vaccination Programmes in Preventing HPV-associated Oral Cancers: A Systematic Review.
BMC Cancer. 2026. Douyat LM, Spencer A.RecentSR

現在、診療所の工事のため6月30日まで休診しております。ご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願いします。
24/06/2026

現在、診療所の工事のため6月30日まで休診しております。

ご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願いします。

24/06/2026

当院でも多く処方するアセトアミノフェン(カロナール)は非常に安全な薬として認識されていますが、副作用として肝機能障害の発現が報告されています。

しかし、この肝機能障害の発生率は、他の薬剤性肝障害と比較して高くはありません。

急性肝不全を含む肝機能障害の原因の多くは過量服用によるものなのです。

【重要な区別】
アセトアミノフェンによる肝障害は、他の薬剤性肝障害とは異なる特徴があります: [1]
用量依存性:アセトアミノフェンは予測可能な用量依存性の肝毒性を示します。通常、10g以上の過量服用で肝障害のリスクがあります [2]

特異体質性肝障害との違い:他の多くの薬剤による肝障害は特異体質性(idiosyncratic)で、用量に関係なく稀に発生します。[1]

急性肝不全における原因としてアセトアミノフェンは多く報告されています。
北米:急性肝不全症例の45.7%[3]
英国:急性肝不全症例の65.4%[3]
米国:急性肝不全症例の約50%[4-6]
重要な点として、これらの多くは過量服用によるものであり、治療用量での使用による肝障害ではありません。[2][7]

【薬剤性肝障害全体における割合】
薬剤性肝障害(DILI)全体の中では、アセトアミノフェンは約7%を占めると推定されています。重症急性肝障害および急性肝不全に限定すると、アセトアミノフェンは56%を占めます。 [8]

【治療用量での安全性】
治療用量(成人で1日最大4,000mg)では、アセトアミノフェンは安全であり、副作用は少ないとされています。

ただし、以下のリスク因子がある場合は、治療用量でも肝毒性のリスクが高まる可能性があります[2][6-7]
・絶食または栄養不良
・アルコール摂取
・複数のアセトアミノフェン含有製品の同時使用

▶︎アセトアミノフェンによる肝障害の発生率が高いのは、その広範な使用と過量服用の頻度によるものであり、治療用量での使用における肝毒性リスクが他の薬剤より本質的に高いわけではありません。

1.
Drug-Induced Liver Injury — Types and Phenotypes.
The New England Journal of Medicine. 2019. Hoofnagle JH, Björnsson ES.Review
2.
Acute Liver Failure Guidelines.
The American Journal of Gastroenterology. 2023.Shingina A, Mukhtar N, Wakim-Fleming J, et al.Guideline
3.
Acute Liver Failure.
Lancet. 2019. Stravitz RT, Lee WM.Review
4.
Liver Injury Induced by Paracetamol and Challenges Associated With Intentional and Unintentional Use.
World Journal of Hepatology. 2020. Rotundo L, Pyrsopoulos N.Review
5.
Public Awareness of Acetaminophen and Risks of Drug Induced Liver Injury: Results of a Large Outpatient Clinic Survey.
PloS One. 2020. Mitchell RA, Rathi S, Dahiya M, et al.
6.
Interventions for Paracetamol (Acetaminophen) Overdose.
The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018. Chiew AL, Gluud C, Brok J, Buckley NA.SR
7.
AASLD Practice Guidance on Drug, Herbal, and Dietary Supplement-Induced Liver Injury.
Hepatology. 2023. Fontana RJ, Liou I, Reuben A, et al.Guideline
8.
Paracetamol (Acetaminophen) Overdose and Hepatotoxicity: Mechanism, Treatment, Prevention Measures, and Estimates of Burden of Disease.
Expert Opinion on Drug Metabolism & Toxicology. 2023. Chidiac AS, Buckley NA, Noghrehchi F, Cairns R.Review
9.
Severe Acute Liver Injury After Hepatotoxic Medication Initiation in Real-World Data.
JAMA Internal Medicine. 2024.Torgersen J, Mezochow AK, Newcomb CW, et al.Opinion
10.
Drug-Related Hepatotoxicity.
The New England Journal of Medicine. 2006. Navarro VJ, Senior JR.Review

16/06/2026

最も推奨される歯ブラシ法は、1日2回、2分間、フッ素入り歯磨き粉を使用した歯磨きです。ただし、特定のブラッシング技術(バス法、フォーンズ法など)の優位性を示す強力なエビデンスは限られています。[1-3]

ブラッシング技術に関する現状ですが、複数のシステマティックレビューにより、特定のブラッシング技術の優位性は明確ではないことが示されています。2024年のネットワークメタアナリシスでは、フォーンズ法、バス法、スクラブ法を比較した結果、プラーク除去や歯肉炎予防における効果の差は限定的でした。歯科協会、歯磨き粉メーカー、教科書によって推奨される方法は大きく異なり、最も多く推奨されているのは修正バス法(19団体)でしたが、バス法(11団体)、フォーンズ法(10団体)、スクラブ法(5団体)も推奨されています。 [1-2]

【エビデンスに基づく推奨事項】国際歯科連盟(FDI)の専門家コンセンサスによる2024年のガイドラインでは、以下が推奨されています:[3]
・頻度:1日2回の歯磨き
・時間:最低2分間
・歯ブラシ:柔らかい毛のブラシ(手動または電動)
・歯磨き粉:フッ素入り歯磨き粉の使用
・歯間清掃:歯ブラシだけでは歯間部のプラークを十分に除去できないため、フロスや歯間ブラシの併用が重要[4-5]

【特定の技術に関する知見】
・修正バス法:歯頸部のプラーク除去に最も効果的ですが、習得が難しいとされています[6]
・垂直法:水平法と比較して、歯間部のプラーク除去に優れていることが示されています[7]
・バス法:1日2回、最低2分間のブラッシングで、プラークと歯肉指数に良好な効果があります[8]

実践的なアプローチですが、歯周病予防のための機械的口腔衛生は、個別化された指導が重要です。患者の手先の器用さ、認知能力、口腔内の状態に応じて、最適なブラッシング方法を選択することが推奨されます。[5][9-10]

歯ブラシの種類に関しては、電動歯ブラシ(特に回転振動式)が手動歯ブラシよりもプラークと歯肉炎の軽減に効果的である可能性がありますが、その臨床的意義は不明確です。[4]
1.
Manual Toothbrushing Techniques for Plaque Removal and the Prevention of Gingivitis-a Systematic Review With Network Meta-Analysis.
PloS One. 2024. Deinzer R, Weik U, Eidenhardt Z, Leufkens D, Sälzer S.
2.
An Analysis of Methods of Toothbrushing Recommended by Dental Associations, Toothpaste and Toothbrush Companies and in Dental Texts.
British Dental Journal. 2014. Wainwright J, Sheiham A.
3.
Development of Tooth Brushing Recommendations Through Professional Consensus.
International Dental Journal. 2024. Glenny AM, Walsh T, Iwasaki M, et al.
4.
Home Use of Interdental Cleaning Devices, in Addition to Toothbrushing, for Preventing and Controlling Periodontal Diseases and Dental Caries.
The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019. Worthington HV, MacDonald L, Poklepovic Pericic T, et al.
5.
Contemporary Practices for Mechanical Oral Hygiene to Prevent Periodontal Disease.
Periodontology 2000. 2020. Sälzer S, Graetz C, Dörfer CE, Slot DE, Van der Weijden FA.
6.
Comparison of Modified Bass, Rolling, and Current Toothbrushing Techniques for the Efficacy of Plaque Control - A Randomized Trial.
Journal of Dentistry. 2023. Weng L, Wen J, Cui G, et al.
7.
Vertical Brushing Versus Horizontal Brushing: A Randomized Split-Mouth Clinical Trial.
Quintessence International. 2014. Mastroberardino S, Cagetti MG, Cocco F, et al.
8.
Manual Toothbrushes, Self-Toothbrushing, and Replacement Duration to Remove Dental Plaque and Improve Gingival Health: A Scoping Review From Recent Research.
Journal of Dentistry. 2024. Kaneyasu Y, Shigeishi H, Niitani Y, et al.
9.
Oral Health Care for Children and Youth With Developmental Disabilities: Clinical Report.
Pediatrics. 2024. Sarvas E, Webb J, Landrigan-Ossar M, Yin L.Guideline
10.
Mechanical Plaque Removal in Step-1 of Care.
Periodontology 2000. 2023. Van der Weijden GAF, van Loveren C.

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