17/03/2026
■身体感覚に意識を向けただけで軽い解離がおきる難しいケース
前回の投稿で少し触れましたが、セッションの中で次のような反応を示すクライアントがいらっしゃいます。
「トラウマ的な出来事を思い出そうとしなくても、ただ自分の身体感覚に意識を向けるだけで、急に強い眠気に襲われたり、頭がボーっとして意識が遠のいたり(軽い解離状態)してしまう」
今回は、この現象のメカニズムと、私がどのようにアプローチしていくのかについてお話しします。
■なぜ「体を感じる」だけでシャットダウンするのか?
このような方にとって、「自分の内側の感覚に触れること」自体が、神経系にとって非常に強い脅威(トリガー)になっています。そのため、無意識のうちに自分を守る戦略として、注意資源を「思考(頭で考えること)」にフル稼働させ、体から意識を逸らそうとしているケースも少なくありません。
例えば、次のようなケースを想像してみてください。
前立腺に違和感があるが、病院の検査では異常なし。しかし、その違和感に意識を向けようとすると……
●「何が原因?」「どうすれば治る?」「やっぱり病気?」と不安な思考が止まらなくなる。
●あるいは、神経系が耐えきれずシャットダウンして強い眠気に襲われたり、頭がボーっとして意識が遠のく
これは、心臓、胃、呼吸といった「内臓感覚」が、過去の圧倒的な恐怖やストレスと密接に結びついているために起こる反応です。
■ステップ1:まずは「安全な島」を見つける
セラピーの初期段階では、「意識を向けても大丈夫な、別の感覚」を探します。
●バランスディスクに乗る
●スモービーリングを振る
●イボイボのボールを「にぎにぎ」する
こうした感覚は多くの場合、安全なリソースとなります(ですが人によってはこれもトラウマを刺激します)。まずはこれを通じて、神経系を「落ち着いたニュートラルな状態」へ戻す練習を積み重ねます。
■ステップ2:振り子のように「行き来」する(ペンデュレーション)
土台ができたら、次のステップへ進みます。
●症状に関する思考(「病気じゃないか?」という不安など),
あるいは内蔵の感覚を、ほんの少しだけ呼び出す。
●すぐに、先ほどの「安全な感覚(ディスクやボール)」に意識を戻し、ニュートラルな状態へ着地する。
この「少しだけ触れて、すぐ安全な場所に戻る」という動きを、振り子のように繰り返します。これを繰り返すことで、神経系が少しずつ「体の感覚=危険」という誤学習を解き、シャットダウンせずにいられる容量(耐性の窓)が広がっていきます。
■ステップ3:身体感覚を通じてエネルギーをリリース
シャットダウンが起きなくなって初めて、準備が整ったと言えます。ここからようやく、通常のトラウマケアのステップ——つまり、滞っていたエネルギーをゆっくりと身体感覚を通じてリリースしていくプロセスへと移行できるのです。