北毛保健生活協同組合

北毛保健生活協同組合 群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

1953年(昭和28年)に、渋川、北群馬の働く人々が中心に、いつでも安心してかかれる医療機関をつくろうと、「渋川診療所」が開設されました。
その後1977年(昭和52年)12月に渋川市有馬に62床の内科・小児科・精神科の病院としてスタート。13年の歳月を経て一般病床100床、療養型病床50床の現在に至ります。新緑に映える榛名山の東の麓、一見あります。

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年9月の医療情報、二つ目です。今回は新型コロナワクチン接種の効果について。1.臨床的な疑問:COVID-19ワクチンは依然として成人をCOVID-19による緊急受診・救急外来受...
01/09/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年9月の医療情報、二つ目です。
今回は新型コロナワクチン接種の効果について。
1.臨床的な疑問:COVID-19ワクチンは依然として成人をCOVID-19による緊急受診・救急外来受診および入院から保護しているの?
→紹介文での答え:COVID-19ワクチンは、依然として緊急受診や救急外来への受診、そして何よりも重要なこととして、入院の必要性を大幅に低減させている(OR0.45で入院が半分以下に減少)。入院率を1%と仮定すると、1件の入院を防ぐために必要な接種者数は180人となる(100%/[1%-0.45%]≒180)。また、政権(現在のアメリカ大統領というか反ワクチン派の厚生長官)によって『Morbidity and Mortality Weekly Report』への掲載を阻止されたにもかかわらず、この研究を発表したCDCの著者たちに称賛を送りたい。
2.僕の意見:まだ65歳前ですが、有料となってからも毎年年末から年明けにかけて、年に1回自腹で(重症化が防げる)新型コロナワクチン接種をしています。こういったデータから(政権からの逆風を受けながらもデータを出しているという事情もあって)も今年もまた接種するつもりです。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Wiegand RE, Chickery S, Yang DH, et al. Interim estimated effectiveness of 2025-2026 COVID-19 vaccines in adults using a test-negative design. JAMA Netw Open 2026;9(6):e2625152.
まとめ
Study Design:検査陰性症例対照研究(テスト・ネガティブ・デザイン)
米国疾病予防管理センター(CDC)は、インフルエンザワクチンおよび(今回のスタディでは)COVID-19ワクチンの有効性を評価するため、毎年「検査陰性症例対照(TNCC)」研究を実施している。この研究デザインでは、急性疾患で受診し、COVID-19検査を受けた患者を特定する。その後、急性COVID-19疾患の検査で陽性となった患者と陰性となった患者の間で、COVID-19ワクチンの接種率を比較する。例えば、COVID-19陽性の入院患者のうち、95%が未接種であったのに対し、陰性の患者では88%が未接種であった。これまでの研究では、同じ患者を対象とした場合、TNCC研究の結果はランダム化比較試験(RCT)の結果と類似することが示されており、この研究デザインでは前向きコホート研究とは異なり、ワクチン接種を受けた患者が医療を受ける傾向も強い場合に生じるバイアスを回避できると考えられる(TNCC研究では対象となるすべての患者さんがすでに医療機関を受診しているため)。年齢、性別、人種、民族、受診日、および地理的地域を調整した分析において、ワクチン接種済みの患者さんは、緊急診療所/救急外来(UC/ED)への受診(調整オッズ比[aOR]0.50;95%信頼区間 0.43~0.58)や入院(aOR 0.45; 0.34~0.59)となる確率が有意に低いと判定された。これに対応するワクチンの有効性(VE)は、UC/ED受診で50%、入院で55%であった。本研究では、集中治療室(ICU)への入院や死亡といったアウトカムについては、統計的検出力が不充分だった(これらについては、過去の大規模RCTにおいてワクチン接種により低減することが示されている)。

Wiegand RE, Chickery S, Yang DH, Ball SW, DeSilva MB, Dascomb K, Irving SA, Natarajan K, Klein NP, Grannis SJ, Ong TC, Rowley EAK, Yates A, Zhuang Y, Wilson S, McEvoy CE, Essien IJ, Akinsete OO, Naleway AL, Koppolu P, Zerbo O, Hansen JR, Jacobson KB, Block L, Dixon BE, Duszynski T, Rogerson C, Barron MA, Chavez C, Mak J, Ciesla AA, Godfrey M, Kautz A, Najdowski M, Link-Gelles R, DeCuir J, Payne AB. Interim Estimated Effectiveness of 2025-2026 COVID-19 Vaccines in Adults Using a Test-Negative Design. JAMA Netw Open. 2026 Jun 1;9(6):e2625152. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2026.25152. PMID: 42334917; PMCID: PMC13291846.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年9月の医療情報、一つ目です。今回はエンシトレルビル(ゾコーバ)のCOVID-19発症予防効果について。1.臨床的な疑問:エンシトレルビルは同居者(家族など)へのCOVID-1...
01/09/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年9月の医療情報、一つ目です。
今回はエンシトレルビル(ゾコーバ)のCOVID-19発症予防効果について。
1.臨床的な疑問:エンシトレルビルは同居者(家族など)へのCOVID-19感染を予防する上で安全かつ有効か?
→紹介文での答え:症状発現後72時間以内にエンシトレルビル(ゾコーバ)を経口投与すると、投与しなかった場合に比べ家族などの同居者に症状を伴うCOVID-19感染発症が減り(NNT = 16)忍容性も良好である。ゾコーバは2026年6月に米国食品医薬品局(FDA)により新型コロナウイルス曝露後予防薬として承認された。
2.僕の意見:ゾコーバってCOVID-19の重症化予防効果ははっきりしないし、症状軽減もわずかしかないデータばかりだし、安くて相互作用が少ないことだけが取り柄だと思っていました。今回のデータは暴露後の予防効果を期待させる(インフルエンザのタミフルみたいに)もので(もともとゾコーバはウイルス排出が早期に減ることが一つの売りでしたね)、今後同じような検討での結果が期待されます。今後同じようなデータが出てくれば、高齢者施設で予防投与を考慮するところも出てくるかもしれませんね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Hayden FG, Shinkai M, Clark TW, et al, for the SCORPIO-PEP Study Team. Ensitrelvir for Covid-19 postexposure prophylaxis in household contacts. N Engl J Med 2026;394(19):1905-1915.
まとめ
Study Design:二重盲検RCT(隠蔽化不明)
エンシトレルビル(ゾコーバ)は、SARS-CoV-2 3C様プロテアーゼ阻害剤であり、日本では12歳以上の患者さんにおける軽症から中等症のCOVID-19の経口治療薬として承認されている。このスタディでは、登録から72時間以内に少なくとも1つのCOVID-19感染症状があり、PCR検査結果が陽性であった1319例のインデックス患者(最初に見つかった症例)さんを特定した。そのうち、COVID-19特異的治療を受けたのはわずか18.7%であった。患者の約3分の2は米国に在住しており、残りはアルゼンチン、南アフリカ、ベトナム、および日本に在住していた。同居接触者には、ベースライン時点でSARS-CoV-2の検査結果が陰性であり、インデックス患者さんの症状発現から72時間以内に本研究に登録された12歳以上の同居者が含まれた。これらの同居接触者(n = 2387)は、エンシトレルビル(ゾコーバ)群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。修正intention-to-treat(mITT)集団は、試験薬(ゾコーバあるいはプラセボ)を少なくとも1回投与された2041名(85%)で構成された。同居接触者の平均年齢は42歳であり、71%はインデックス患者さんの症状発症から48時間以内に無作為割付された。ゾコーバは、1日目に375 mg、2日目から5日目までは1日1回125 mgが投与された。それぞれの群の同居接触者の性別には不均衡が見られ、ゾコーバ群では57%が女性であったのに対し、プラセボ群では62%であった(有意性は不明)。mITT集団において、ゾコーバ群では、同居接触者がCOVID-19検査で陽性となる確率が有意に低かった(2.9%対9.0%;P < 0.001;治療必要数[NNT]=16)。これは、完全なITT集団(1回も投与を受けなかった群を含む)においても同様であった(4.4%対10.2%;P < 0.001;NNT = 17)。また、ゾコーバ群では、すべての感染(有症状・無症状を問わず)が有意に少なく、これによりさらる感染拡大を抑制できる可能性がある(14.0%対21.5%;P < 0.05;NNT = 13)。両群間で有害事象に差は認められなかった。

Hayden FG, Shinkai M, Clark TW, Luetkemeyer AF, Sax PE, Hanage WP, Gebo KA, Ikematsu H, Izumikawa K, Fukushi A, Kezbor S, Sakaguchi H, Lacey S, Ichihashi G, Ohmagari N, Uehara T; SCORPIO-PEP Study Team. Ensitrelvir for Covid-19 Postexposure Prophylaxis in Household Contacts. N Engl J Med. 2026 May 14;394(19):1905-1915. doi: 10.1056/NEJMoa2509306. PMID: 42127390.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年8月の医療情報、二つ目です。今回は高齢女性の尿路感染の診断について。1.臨床的な疑問:高齢女性の(治療すべき)尿路感染症の診断に最適な尿中白血球カットオフ値はどれくらいか?→...
01/08/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年8月の医療情報、二つ目です。
今回は高齢女性の尿路感染の診断について。
1.臨床的な疑問:高齢女性の(治療すべき)尿路感染症の診断に最適な尿中白血球カットオフ値はどれくらいか?
→紹介文での答え:65歳以上の女性において無症候性細菌尿を有する女性の過剰治療を避けるために、尿路感染症を診断する前に膿尿のカットオフ値をかなり高くすべきである。この診断的ケースコントロールデザインの限界は、検査の精度を過大評価する傾向があることであるため、臨床的に尿路感染症が疑われる女性を対象としたコホートデザインを用いた追跡研究を次に行うべきである。
参考:このPOEMはカナダ看護協会のChoosing Wisely Canada勧告と一致している: 特定の尿路症状がない限り、高齢者の細菌尿の治療に抗菌薬を勧めないこと。不必要な抗菌薬の使用を減らすための患者用ハンドアウトも用意されている。
2.僕の意見:ではこれで抗生剤使用が減らせるかというと、「やっぱり心配だから抗生剤使用しておこう」となりそうな気もします。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Bilsen MP, Aantjes MJ, van Andel E, et al. Current pyuria cutoffs promote inappropriate urinary tract infection diagnosis in older women. Clin Infect Dis 2023;76: 2070-2076.
まとめ
Study Design:診断精度研究
尿路感染症(UTI)を診断するための通常のカットオフ値は、尿中白血球数10個/マイクロリットル(μl)以上または尿沈渣で白血球数5~10個/400倍視野(HPF)以上である。しかし、これらのカットオフ値は閉経前の女性を対象とした研究から得られたものである。高齢女性の約20%は無症候性細菌尿(ASB)を有しており、その90%はある程度の膿尿も有している。高齢女性におけるUTIの診断に最適な白血球カットオフ値を同定するために、このスタディの研究者らは、尿培養で尿路感染を起こしやすい病原体が陽性、少なくとも2つの下部尿路症状(LUTS)を持ち、少なくとも尿中白血球数10個/μlを満たすUTIを有する65歳以上の女性63人を同定した。比較群は65歳以上でLUTSのない101人の地域在住女性で、18人がASB、25人が尿培養陰性、58人が混合細菌叢(常在菌)の培養結果であった。すべての尿検体は自動顕微鏡検査と尿フローサイトメトリーを受けた。UTI検査としての白血球のROC曲線のArea Under the Curve(AUC)は、いずれの方法でも0.93であった。自動顕微鏡検査の最適カットオフは尿中白血球数265個/μl以上であり、感度は88%、特異度は88%であった(陽性尤度比[LR+]7.2;陰性尤度比[LR-]0.14)。フローサイトメトリーの場合、最適なカットオフは尿中白血球数231個/μl以上で、感度は91%、特異度は86%であった(LR+ 6.5; LR- 0.10)。尿中白血球数10個/μl以上のカットオフはどうであったか?感度は100%であったが、特異度は36%に過ぎなかった。

Bilsen MP, Aantjes MJ, van Andel E, Stalenhoef JE, van Nieuwkoop C, Leyten EMS, Delfos NM, Sijbom M, Numans ME, Achterberg WP, Mooijaart SP, van der Beek MT, Cobbaert CM, Conroy SP, Visser LG, Lambregts MMC. Current Pyuria Cutoffs Promote Inappropriate Urinary Tract Infection Diagnosis in Older Women. Clin Infect Dis. 2023 Jun 16;76(12):2070-2076. doi: 10.1093/cid/ciad099. PMID: 36806580; PMCID: PMC10273372.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年8月の医療情報、一つ目です。今回は24時間血圧計の有用性について。1.臨床的な疑問:全死因死亡や心血管死のリスク予測に関して24時間血圧測定値は診療所での血圧測定値よりも優れ...
01/08/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年8月の医療情報、一つ目です。
今回は24時間血圧計の有用性について。
1.臨床的な疑問:全死因死亡や心血管死のリスク予測に関して24時間血圧測定値は診療所での血圧測定値よりも優れているか?
→紹介文での答え:この研究は24時間血圧測定値が死亡転帰の予測に関して診療所での測定よりも有益であることを示している。
2.僕の意見:以前から同様の結論のデータは出ていましたね。今回も24時間血圧に比べ診療所での血圧は、収縮期で20、拡張期で10ほど高いこと、24時間血圧が高いとより死亡や心血管死と関連しているかもしれないということでした。ただ、診療所で何台も(高価な)24時間血圧計をそろえることができないのが難点ですね(良いことはわかっていても実現できない)。やはり日中よりも夜間の収縮期血圧高値の方が日中より悪そうですね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Staplin N, de la Sierra A, Ruilope LM, et al. Relationship between clinic and ambulatory blood pressure and mortality: an observational cohort study in 59 124 patients. Lancet 2023;401(10393):2041-2050.
まとめ
Study Design:後ろ向きコホート
政府、学会、企業から資金提供を受けたこのスタディの著者らは、Spanish Ambulatory Blood Pressure Registry(スペイン全17州の国民保健システムに登録された223ヵ所のプライマリケア施設の医師によって選択された患者の24時間血圧測定記録)を国の人口動態統計にリンクした。このレジストリには、ガイドラインが推奨する外来血圧モニタリングの適応を満たした成人59124人が登録されており、その中には白衣高血圧の疑い、難治性または抵抗性高血圧、薬物治療効果の評価、高リスク高血圧、不安定または境界域高血圧、概日リズム血圧パターンの研究などのデータが含まれていた。診療所での血圧データは、5分間の安静後に記録された2つの測定値の平均値を用いた。24時間血圧測定記録は、日中は20分ごと、夜間は30分ごとに血圧を測定し、研究者らは有効な測定値すべての平均を算出した。
登録参加者の平均年齢は58.7歳で、診療所での平均血圧は148/86.5、24時間血圧測定記録の平均は128.8/76.2であった。半数強(53%)が男性であった。中央値9.7年の追跡期間中に7174人(12.1%)が死亡し、そのうち2361人(4.0%)が心血管系の原因による死亡であった。診療所での血圧と24時間血圧測定記録の相関はわずかであった(収縮期血圧で0.43、拡張期血圧で0.52)。死亡率に関連する多くの因子(年齢、性別、喫煙の有無、肥満度、糖尿病の有無、脂質異常症、心血管疾患の既往、降圧薬の数)を補正した後、著者らによると、診療所での収縮期血圧が全死因死亡率(ハザード比[HR]1. 08)、心血管死亡率(HR 1.11)との関連が認められたが、全死亡率および心血管死亡率との関連は、24時間血圧測定記録の収縮期血圧(それぞれHR 1.30および1.41)、日中収縮期血圧(HR 1.25および1.35)、夜間収縮期血圧(HR 1.36および1.46)でのほうが大きかった。

Staplin N, de la Sierra A, Ruilope LM, Emberson JR, Vinyoles E, Gorostidi M, Ruiz-Hurtado G, Segura J, Baigent C, Williams B. Relationship between clinic and ambulatory blood pressure and mortality: an observational cohort study in 59 124 patients. Lancet. 2023 Jun 17;401(10393):2041-2050. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00733-X. Epub 2023 May 5. PMID: 37156250.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年7月の医療情報、二つ目です。今回は片頭痛予防薬について。1.臨床的な疑問:アトゲパント(クリプタ)は、慢性片頭痛を有する成人の頭痛頻度を減少させるのに有効か?→紹介文での答え...
01/07/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年7月の医療情報、二つ目です。
今回は片頭痛予防薬について。
1.臨床的な疑問:アトゲパント(クリプタ)は、慢性片頭痛を有する成人の頭痛頻度を減少させるのに有効か?
→紹介文での答え:アトゲパントは厳密に選択された成人の慢性片頭痛患者において急性片頭痛の予防においてプラセボよりも有効である。アトゲパントが他の予防療法よりも優れているかどうかはまだ不明であるがより高価であることは確かである。
2.僕の意見:値段が高くても辛くて日常生活に支障が出る片頭痛が(他の安い薬より)予防できるのであれば服用したいという希望の方は多いのではないかと思います。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Pozo-Rosich P, Ailani J, Ashina M, et al. Atogepant for the preventive treatment of chronic migraine (PROGRESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet 2023;402(10404):775-785.
まとめ
Study Design:二重盲険無作為割り付け比較試験
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬(いわゆるゲパント系薬剤、日本では経口のナルティーク=リメゲパントが採用されている)は、主に急性(慢性ではない)片頭痛の治療に用いられてきた。このメーカー後援の国際多施設共同研究において、研究者らは、少なくとも1年以上の慢性片頭痛(少なくとも15頭痛日/月、そのうち少なくとも8日が片頭痛)を有し、4週間のベースライン・スクリーニング期間中に電子頭痛日誌を記入することを非常によく守っている成人を登録した。142の参加施設は1489人の適格な参加者を確認したが、そのうち711人が除外され(658人は 「スクリーニングの失敗 」)による)、778人が残った。これは、各施設から5〜6人しか積極的な参加者がいなかったことになる。スクリーニング期間後、参加者はアトゲパント30mgを1日2回投与する群(n=257)、アトゲパント60mgを1日1回投与する群(n=262)、またはプラセボを12週間投与する群(n=259)に無作為に割り付けられた。マスキングを維持するため、各参加者は1回2錠を1日2回服用した。研究者らは、無作為化後16週間まで、2~4週間ごとに参加者を評価した。参加者は、少なくとも試験開始前の12週間、用量が安定していれば、試験前の予防療法を継続することができた。急性片頭痛が発生した場合、参加者はゲパント以外のものも使用することができた。研究者らは修正intention-to-treat解析を用い、少なくとも1回の試験薬の投与を受け、ベースラインの日誌データに加え、評価可能な4週間の頭痛日誌データが少なくとも1回あった参加者のみを対象とした。

ベースライン時の参加者の片頭痛日数は月平均約19日であった。試験終了時、片頭痛の平均日数は各群とも減少した(それぞれ-7.5日、-6.9日、-5.1日)。プラセボと比較して、アトゲパント30mgを1日2回服用した群では片頭痛日数が2.4日減少し、アトゲパント60mgを服用した群では片頭痛日数が1.8日減少した。さらに、プラセボと比較して、アトゲパント投与群では急性期治療の必要日数が少なかった(それぞれ-2.6日、-2.1日)。アトゲパント投与群ではプラセボ投与群(26%)に比べ、片頭痛日数が少なくとも50%減少した(それぞれ43%、41%)。片頭痛の頻度を50%減少させるためには、成人6~7人を16週間アトゲパントで治療する必要がある。副作用はプラセボ群(49%)よりアトゲパント投与群(それぞれ56%、63%)でわずかに多く、その多くは消化器系であった。しかし、副作用による投与中止は各群で同程度であった(3%-5%)。最後に、この薬は高価である。GoodRx.comというホームページによると、60mgの錠剤が30錠で1000ドル以上、30mgの錠剤が60錠でその倍である。私(コメント者)はこの薬を患者に勧める前に、他の治療法(β遮断薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、アミトリプチリン、抗けいれん薬、あるいはリボフラビンなど)を試すこと勧めるだろう。

Pozo-Rosich P, Ailani J, Ashina M, Goadsby PJ, Lipton RB, Reuter U, Guo H, Schwefel B, Lu K, Boinpally R, Miceli R, De Abreu Ferreira R, McCusker E, Yu SY, Severt L, Finnegan M, Trugman JM. Atogepant for the preventive treatment of chronic migraine (PROGRESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet. 2023 Sep 2;402(10404):775-785. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01049-8. Epub 2023 Jul 26. Erratum in: Lancet. 2023 Sep 2;402(10404):774. Erratum in: Lancet. 2023 Oct 14;402(10410):1328. PMID: 37516125.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年7月の医療情報、一つ目です。今回は小児の伝染性単核症(IM)に対する抗生剤投与による発疹について。1.臨床的な疑問:小児および青年の伝染性単核症(IM)においてアモキシシリン...
01/07/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年7月の医療情報、一つ目です。
今回は小児の伝染性単核症(IM)に対する抗生剤投与による発疹について。
1.臨床的な疑問:小児および青年の伝染性単核症(IM)においてアモキシシリンは他の抗生物質よりも発疹を起こしやすいか?
→紹介文での答え:この研究は、小児のIMにおいてアモキシシリンが他の抗生物質よりも発疹を起こしやすいことはないことを示唆するエビデンスを追加するものである。小児のIMに抗生物質が考慮されるまれなケースでは、やはりアモキシシリンのようなスペクトルの狭い抗生物質が妥当だと考えられる。
2.僕の意見:IMには発疹を起こすためアモキシシリンのような合成ペニシリンは、溶連菌感染症(鑑別しきれない場合や同時発症などの可能性)に対する治療はバイシリンG一択(このため出荷調整がかかっている期間は困りました)と思っていましたが、そこまでこだわらなくても良い(でも溶連菌感染症が強く疑われるのであればより狭いスペクトラムで良いのですからやっぱり第一選択ですが)のかもしれませんね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Zhang R, Mao Z, Xu C, et al. Association between antibiotic exposure and the risk of rash in children with infectious mononucleosis: a multicenter, retrospective cohort study. Antimicrob Agents Chemo 2023;67(6):e0024923.
まとめ
Study Design:後ろ向きコホート
アモキシシリンのようなアミノペニシリン系抗生物質は、伝染性単核球症(IM)の小児に発疹を引き起こす可能性が高く、避けるべきであると、主にアンピシリンに関する古い研究に基づいて考えられてきた。最近の研究では、アモキシシリンによる発疹の発生率は低く、また、他の抗生物質がIMの小児に発疹を誘発する可能性があることがわかってきている。中国で行われたこのスタディでは、14の病院のうち1つでIMのために入院した872名の小児が特定された(このスタディでは多くの小児の入院期間が7-14日であり、中国の病院と欧米の病院とでは入院の基準や入院期間が異なる可能性が高い)。 薬剤アレルギーの既往歴のある子供や全身性コルチコステロイドを投与された子供は除外され、その結果767名が研究対象となりそのうち552名(71%)が抗生物質の投与を受け、そのうち49名がアモキシシリンの投与を受けた。ほとんどの小児は6歳以下で、61%が男性であった。著者らは、年齢と性別による交絡の可能性を調整するために回帰分析を行った。全体として、92例(12%)の小児に何らかの発疹がみられ、抗生物質が投与され小児での発生割合は13%、投与されなかった小児では9.3%だった(調整オッズ比[aOR]1.47;95%CI 1.04〜2.08ということで、投与された小児に有意に多かった)。著者らはまた、発疹が抗生物質に関連したものなのか、それとも他の原因によるものなのかを判定しようと試みた。患者データと発疹に関連したと考えられる抗生物質の投与時期を対にして検討した結果、92例の発疹のうち43例は抗生物質に関連したものであったと考えられた。この43例のうちアモキシシリンが投与されていたのは2例のみだった。つまり、アモキシシリンを投与された子供の4.1%(2/49)のみが抗生物質関連発疹に罹患したのに対し、別の抗生物質を投与された子供では8.2%(41/503)であった(差のP = 0.412)。この研究の限界としては、研究対象が入院経験のある小児のみであったことと、発疹の原因に関する判断が主観的であったことが挙げられる。

Zhang R, Mao Z, Xu C, Wang W, Kwong JS, Xu M, Song Y, Lv T, Teng Z, Zhong R, Liu H, Liu Y, Wang Q, Wang Y, Zhang Y, Chen S, Chai X, He R, Zheng W, Zhang J. Association between Antibiotic Exposure and the Risk of Rash in Children with Infectious Mononucleosis: a Multicenter, Retrospective Cohort Study. Antimicrob Agents Chemother. 2023 Jun 15;67(6):e0024923. doi: 10.1128/aac.00249-23. Epub 2023 May 23. PMID: 37219437; PMCID: PMC10269065.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年6月の医療情報、二つ目です。今回はちょっと古いデータ(すでに最近のコクランレビューで同じような結論が得られている)ですが、新しいアルツハイマー病の薬であるソラネズマブの認知機...
02/06/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年6月の医療情報、二つ目です。
今回はちょっと古いデータ(すでに最近のコクランレビューで同じような結論が得られている)ですが、新しいアルツハイマー病の薬であるソラネズマブの認知機能悪化予防効果について。
1.臨床的な疑問:脳内にアミロイド沈着があるが認知症の所見がない患者においてソラネズマブを4.5年間服用することは有益(認知機能悪化予防になる)か?
→紹介文での答え:ソラネズマブは脳内にアミロイド沈着はあるが認知機能はほぼ正常な患者において4.5年服用しても認知、記憶、機能の障害を予防しなかった。
2.僕の意見:高価な薬の割に臨床的に目立った効果がなく、また適用にもいろいろなハードルがあり、さらに最近のデータでは重大な有害事象の報告もあり、期待薄そうです。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Sperling RA, Donohue MC, Raman R, et al, for the A4 Study Team. Trial of solanezumab in preclinical Alzheimer's disease. N Engl J Med 2023;389(12):1096-1107.
まとめ
Study Design:二重盲険無作為割り付け比較試験(隠蔽化の有無は不明)
研究者らは、65〜85歳の成人で、3段階の臨床的認知症評価(CDR:記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味・関心、介護状況の6項目について、評価表に基づいて「健康(CDR0)」、「認知症疑い(CDR0.5)」、「軽度認知症(CDR1)」、「中等度認知症(CDR2)」、「重度認知症(CDR3)」の5段階に分類)のスコアが0点、Mini-Mental State Examination(MMSE)のスコアが25〜30点であり軽度認知障害(MCI:24~27点)程度、ウエクスラー記憶検査の論文記憶項目が6〜18点(25の散文の内容を直後にいくつ答えられるかを問うもので、0〜25点の範囲、スコアが低いほど悪い)の患者さんを同定した。言い換えれば、これらの患者さんは記憶障害が認められるものの、認知機能はほぼ正常であった。スクリーニングを受けた患者のおよそ4分の1が画像診断で脳にアミロイド沈着が認められ、この沈着が認められた1169例がソラネズマブ400mgを1ヵ月に1回静脈内投与する群(ソラネズマブ群:578例)とプラセボを併用する群(プラセボ群:591例)に無作為に割り付けられた。投与量は、別の試験結果に基づき試験期間の中期に最大量(1ヵ月あたり1600mgの静脈内投与)まで増量され、患者さん全員がこの投与量が「充分」受けられるように試験期間が延長された。患者さんの平均年齢は72歳、59%が女性、94%が白人、平均学歴期間は16.6年であった。4.5年後の段階で脱落は両群で同等で、ソラネズマブ群401例、プラセボ群425例が修正intention-to-treat解析の対象となった。4.5年後、Preclinical Alzheimer Cognitive Composite score、MMSE、CDR、その他の尺度において、統計学的または臨床的に有意な群間差は認められなかった。死亡例はソラネズマブ群で6例、プラセボ群で5例であり、重篤な有害事象は両群間で同様であった。

Sperling RA, Donohue MC, Raman R, Rafii MS, Johnson K, Masters CL, van Dyck CH, Iwatsubo T, Marshall GA, Yaari R, Mancini M, Holdridge KC, Case M, Sims JR, Aisen PS; A4 Study Team. Trial of Solanezumab in Preclinical Alzheimer's Disease. N Engl J Med. 2023 Sep 21;389(12):1096-1107. doi: 10.1056/NEJMoa2305032. Epub 2023 Jul 17. PMID: 37458272; PMCID: PMC10559996.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年6月の医療情報、一つ目です。今回はCTによる肺癌スクリーニングについて。1.臨床的な疑問:CTによる肺癌検診は実際の現場でどのような結果をもたらしたか?→紹介文での答え:低線...
02/06/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年6月の医療情報、一つ目です。
今回はCTによる肺癌スクリーニングについて。
1.臨床的な疑問:CTによる肺癌検診は実際の現場でどのような結果をもたらしたか?
→紹介文での答え:低線量CT(LDCT)を用いた肺癌検診を受けた患者のうち98.5%はCT後12ヵ月間に癌は発見されていない。7人に1人は何らかの異常が見つかるがその90%は癌ではない。またスクリーニングを受けるとほぼ3分の1の患者で追加の画像診断が必要となりスクリーニングを受けた患者の2.8%がその後侵襲的な処置を受けることになる。肺癌検診は害のない検査とは言えないだろう。
2.僕の意見:検診というとメリットばかりが強調されやすいですが、お金がかかって放射線を浴びるというデメリットもある割には大きな利益はない(結構害もある)と感じるデータですね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Rendle KA, Saia CA, Vachani A, et al. Rates of downstream procedures and complications associated with lung cancer screening in routine clinical practice: A retrospective cohort study. Ann Intern Med 2024;177(1):18-28.
まとめ
Study Design:後ろ向きコホート
この解析データは、米国の5つの医療システムデータベースから得られた。著者らは、低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)による肺癌スクリーニングを受けたすべての人を同定し、少なくとも12ヵ月間追跡した。著者らはこのグループの中で侵襲的診断手技を受けた患者を同定した。スクリーニングを受けた9266人のうち、1472人(スクリーニングを受けた9266人中15.9%)に何らかの異常が認められたが、その後1年間に肺癌と診断されたのは140人(異常があった1472人中9.5%)であった(陽性適中率9.5%;95%CI8.0%-11.0%)。スクリーニングを受けた患者のほぼ3分の1(31.9%)が12ヵ月以内に何らかの画像診断を追加し(原著のTable3を見ると異常が見つからなかった人の2割強が追加検査を受けている)、2.8%が侵襲的な処置(針生検や気管支鏡検査など)を受けた(同じくTable3を見ると異常が見つからなかった人の0.8%)。さらに、侵襲的手技を受けた患者の30.6%に少なくとも1つの合併症がみられ、そのうち5人に1人は 「重大な 」合併症(心停止、肺虚脱、急性呼吸不全など)であった。

Rendle KA, Saia CA, Vachani A, Burnett-Hartman AN, Doria-Rose VP, Beucker S, Neslund-Dudas C, Oshiro C, Kim RY, Elston-Lafata J, Honda SA, Ritzwoller D, Wainwright JV, Mitra N, Greenlee RT. Rates of Downstream Procedures and Complications Associated With Lung Cancer Screening in Routine Clinical Practice : A Retrospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2024 Jan;177(1):18-28. doi: 10.7326/M23-0653. Epub 2024 Jan 2. PMID: 38163370.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。2026年5月の医療情報、二つ目です。今回は高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの効果について。1.臨床的な疑問:高齢者における入院予防において、高用量インフルエンザワクチンは標...
04/05/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2026年5月の医療情報、二つ目です。
今回は高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの効果について。
1.臨床的な疑問:高齢者における入院予防において、高用量インフルエンザワクチンは標準用量ワクチンより優れているか?
→紹介文での答え:高用量のインフルエンザワクチンは(標準用量のワクチンと比較して)、インフルエンザによる入院をせいぜいごくわずか減少させるだけで、肺炎による入院への効果は不確かである。高用量のワクチンは、かなり高価である(90 ドル対 30 ドル)ため、そのわずかな効果は費用対効果が高いと言えるかどうかは疑問である。
2.僕の意見:やっぱり初期のデータだけで効果のあるなしを判定するのは危険なのかもしれませんね。ここで(有意差がないと)紹介されたGALFLUとDANFLUは2月の医学情報でご紹介したように、メタアナリシスにすると有意差が出るようですが、それは「効果の差が少ない」ことの証明(症例数を莫大にしないと差が検出できない)であり、コストも考えるとそれほど期待できるものではないのかもしれません。現場の混乱というリスク(投与量が0.5mlと0.7mlと異なることから、コミナティのように一人分でキット化されていれば区別がつきやすいですが、今までと同様に注射器に詰めるとすれば間違いが起きやすそう、それから皮下注と筋注という投与方法も異なり、さらに受付で自己負担額を間違えるリスクもありそうです)を考えると、個人的にはしばらく様子を見たいと思ってしまいます。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Pardo-Seco J, Rodríguez-Tenreiro-Sánchez C, Giné-Vázquez I, et al, for the GALFLU Trial Team. High-dose influenza vaccine to reduce hospitalizations. N Engl J Med 2025;393(23):2303-2312.
まとめ
Study Design:非盲険RCT(隠蔽化あり)
予防接種実施諮問委員会は現在、65 歳以上の人々に優先的に推奨する選択肢の一つとして、高用量のインフルエンザワクチンを推奨している。このメーカー資金提供によるスペインの大規模研究は、65 歳から 79 歳の高齢者を対象に、標準用量と高用量のインフルエンザワクチンを比較することを目的として行われた。症例はガリシア州の高頻度ワクチン接種センターで募集され、高用量(ヘマグルチニン60μg)または標準用量(ヘマグルチニン15μg)のインフルエンザワクチン接種を受ける群に無作為に割り付けられた。2023年から2025年までの2つのインフルエンザシーズンにわたり、合計133882名の参加者が無作為に割り付けられた。両群はベースラインで均等であり、平均年齢72歳、男性54%、心肺合併症または癌を有する患者25%であった。主要評価項目は、接種翌年5月31日までのインフルエンザまたは肺炎による入院であった。試験は非盲検で実施されITT解析が行われた。高用量群では標準群に比べ入院率が低かった(0.26%対0.34%;相対的ワクチン有効性[RVE]23.7%;95%CI 6.6%-37.7%)。これは標準用量ワクチンに比べ高用量ワクチンで1件の入院を予防するのに必要な治療患者数(NNT)は1250に相当する。死亡率への影響はなく、有害事象についても群間で差は認められなかった。
同号に掲載されたデンマークの類似研究(参加者332438名)では、インフルエンザまたは肺炎の複合アウトカムにおける入院率に有意差は認められなかった(高用量0.68% vs 標準用量0.73%)。個別に比較してみると、インフルエンザによる入院は有意に減少した(0.06%対0.11%;相対リスク減少率43.6%;信頼区間27.5~56.3%;NNT=2000)が、肺炎による入院には差が認められなかった(0.63%対0.63%)。

Pardo-Seco J, Rodríguez-Tenreiro-Sánchez C, Giné-Vázquez I, Mallah N, Mirás-Carballal S, Piñeiro-Sotelo M, Cribeiro-González M, Conde-Pájaro M, González-Pérez JM, Rivero-Calle I, Bello X, Razzini JL, Dacosta-Urbieta A, Salas A, Harris RC, Loiacono MM, van Aalst R, Farre JM, Dufournet M, Johansen ND, Modin D, Biering-Sørensen T, Durán-Parrondo C, Martinón-Torres F; GALFLU Trial Team. High-Dose Influenza Vaccine to Reduce Hospitalizations. N Engl J Med. 2025 Dec 11;393(23):2303-2312. doi: 10.1056/NEJMoa2509834. Epub 2025 Aug 30. PMID: 40888694.

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群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。少し遅れましたが、2026年5月の医療情報、一つ目です。今月は今年度より定期接種で75歳以上に使用可能になった(ただし今までのものより自己負担額が増える可能性)高齢者に対する高容量イン...
04/05/2026

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
少し遅れましたが、2026年5月の医療情報、一つ目です。今月は今年度より定期接種で75歳以上に使用可能になった(ただし今までのものより自己負担額が増える可能性)高齢者に対する高容量インフルエンザワクチン(「エフルエルダ筋注」という商品名で、1シリンジ0.7mLで通常の4倍のHA抗原があるもの、1回の接種量も投与方法も従来のものと異なり、現場では混乱を招きそうですね)に関する話題を二つ紹介します。
今回は65歳未満の高容量インフルエンザワクチンの効果について。
1.臨床的な疑問:50~64歳の成人において、高用量組換えインフルエンザワクチン(FluBlok)は標準用量ワクチンより効果的か?
→紹介文での答え:高用量組換えワクチンはインフルエンザリスクの絶対的減少がごくわずか見られるものの入院率には影響しない。理論上組換えワクチンは年ごとの抗原ドリフトによる不一致が生じにくい可能性があるが研究期間中は両ワクチンの適合性が比較的低かったためこの点は未証明である。
2.僕の意見:日本でも75歳以上の高齢者に対する高容量ワクチンの使用が2026年度から始まりますが、値段の差ほど期待する効果を示したデータが少ない気がします。マスコミでは「高い効果が見込まれる」という見出しが見受けられますが、本当にそうでしょうか。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Hsiao A, Yee A, Fireman B, Hansen J, Lewis N, Klein NP. Recombinant or standard-dose influenza vaccine in adults under 65 years of age. N Engl J Med 2023;389(24):2245-2255.
まとめ
Study Design:非盲険RCT(隠蔽化なし)
本研究は米国カイザー医療システム(アメリカ最大の非営利の統合型ヘルスケアシステム)において実施されたクラスター無作為化試験(非盲検)であり、高用量組換えワクチン(FluBlok)と標準用量不活化インフルエンザワクチンを比較した。2018/19および2019/20インフルエンザシーズン(2020/21シーズンは明らかな理由で除外)において、参加カイザー施設は規模でマッチングされ、ブロックA(偶数週に高用量ワクチン)またはブロックB(奇数週に高用量ワクチン)に無作為に割り付けられた。最終的に、632962名の患者が高用量組換えワクチンを、997366名が標準用量ワクチンを接種した。全体では、患者の44%が男性、49%が非白人、74%が前年にインフルエンザワクチンを接種していた。著者らはプロペンシティスコアマッチング(治療群と対照群の患者背景を揃え、擬似的にランダム化比較試験のような公平な比較を行う統計手法)を用いて群間の差異を調整した。また、RSV感染を陰性対照として用いたが、これは群間で差が生じないと予想されたためである(実際、差は認められなかった)。要約で報告されている見出しは、50~64歳の対象者において、高用量組換えワクチンが15%高い有効性(95%信頼区間 6.0%~24.5%)を示したというものである。しかし詳細に見てみると、PCRで確認されたインフルエンザの実際の症例数は、高用量群で2.0症例/1000人、通常用量群で2.34症例/1000人であり、約3000人あたり1症例少ないに過ぎない。また、インフルエンザによる入院(0.34 vs 0.39/1000人;P = .19)や市中肺炎による入院(0.38 vs 0.46/1000人;P = .13)といった実際の重要な転帰にも差は認められなかった。GoodRx(アメリカで処方箋薬の価格を比較し、最大80%割引になる無料クーポンを提供するデジタルヘルスケアプラットフォーム)によれば、FluBlokの小売価格は90ドルであるのに対し、標準用量の不活化ワクチンの価格は約30ドルである。

Hsiao A, Yee A, Fireman B, Hansen J, Lewis N, Klein NP. Recombinant or Standard-Dose Influenza Vaccine in Adults under 65 Years of Age. N Engl J Med. 2023 Dec 14;389(24):2245-2255. doi: 10.1056/NEJMoa2302099. PMID: 38091531.

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